4年半も待ちに待ったのに、冒頭からわれらが長澤まさみ様を「ババア」呼ばわりするなんて、あまりにひどい！一瞬、そんなふうに思ったものの、なんのなんの。長澤さんの役作りと演技力は抜群、すべてを吹き飛ばしてくれました。その「エルピス―希望、あるいは災い―」（フジテレビ系、月10枠）第1話に、早くも品川区でのロケシーンが出てきて二重に楽しめたのです。

設定は2018年。長澤さんが演じる浅川恵那は、大洋テレビのアナウンサー。2010年に24歳でゴールデンタイムの報道番組「ニュースエイト」のサブキャスターに抜擢。人気、実力ともに兼ね備えた大型新人として活躍しつつも、だんだんと仕事がしんどくなり、2016年には路チューを週刊誌にスクープされて番組を降板。制作者の墓場と揶揄される深夜番組「フライデーボンボン」で、コーナーMC担当となったのでした。

恵那が走っていた〝聖地〟

報道には二度と関わりたくないと思っている恵那は、番組で芸能ニュースを担当する岸本拓朗（眞栄田郷敦さん演）と、ある事情により2006年に起きた連続少女殺人事件に関わることになります。既に死刑判決が確定しているものの、どうやら冤罪だという。

ぼんぼん育ちで自己評価だけ高く、空気が読めない新米ディレクターの拓朗。一方、番組降板のショックのせいか、不眠症と摂食障害に悩む恵那。眠れぬ夜が明けると、恵那はジョギングに出かけます。走っているのは、なんと品川区の八潮。京浜運河沿いの遊歩道（京浜運河緑道公園）を走りながら、北大井埠頭橋の下をくぐり、北上していきました。橋の上から飛ばしたかと思われるドローンが、恵那を追いかけている映像も。八潮といえば、嵐が主演した映画「ピカンチ」シリーズ全3作を撮影した、いわば〝嵐の聖地〟。この橋の下は、タクマ（二宮和也さん演）がスケートボードを練習し、「LIFE IS HARDだけどHAPPY」と落書きをした場所。思い出しただけでジンと来る人も、少なくないかも。

それだけではありません。ここは、もう少し北上したところにある「八潮北公園スケートボード場」と並び、東京オリンピックでがぜん注目を集めたスケボーの聖地にもなっているのです。八潮北公園スケートボード場には世界的スケーターも来場していますが、北大井埠頭橋下は世界を夢見るスケーターたちの、第一歩となる場所かも。なお、2022.3.24のコラム（ニノに続け！嵐の聖地、八潮。「ピカンチ」のロケ地が、いまスケボーの聖地に！）でも、詳しくご紹介しています。

本格的な展開は昭和なグルメ街から

第1話には、もう一カ所、品川区でロケしたシーンがありました。西五反田にある通称・五反田ヒルズ（正式名リバーライトビル）前です。「フライデーボンボン」のチーフプロデューサーが、パワハラ＆セクハラしまくりで歌っているカラオケパブから抜け出した恵那を追いかけ、声をかけた拓朗。それがこの場所。

五反田ヒルズは、昭和の末期に出来たレトロなレジャービルで、小さなスナックなど「昭和な店」もいっぱい。しかし、各店とも個性豊かで、何年も先まで予約のとれない「食堂とだか」や、立ち食い寿司の名店「都々井」などの人気店も多いグルメ街。2021.11.12のコラム（星野源＆綾野剛コンビも出没！「MIU404」ロケ地・五反田ヒルズは、女子たちがハマる超絶人気の飲食街）でも、その様子をご紹介しています。

さて、2人は水を飲みながら例の冤罪事件について語ります。それまで恵那は関わる気がなかったのですが、拓朗がダメモトで特集の企画書を作ると言い、そこに熱意を感じたため、自らも取り組むことを決意。この物語が本格的に展開していく始まりのシーンとなりました。

10月に開催された世界最大級TVコンテンツ国際取引マーケット「MIPCOMカンヌ2022」で、世界に先駆けて上映されたこのドラマ。ヘアメイク役で出演している三浦透子さんが、「ドライブ・マイ・カー」でのカンヌ映画祭授賞式以来のレッドカーペット登場となったことでも話題に。各方面から注目のドラマが、品川区からスタートしたのです。嬉し～い！

ドラマは中盤に入り、大きく動く様相に。今後も重要な場面で品川区ロケがあるかもしれません。絶対に目が離せないところです。

品川ウォーキングライター・キタロー
台本業 （テレビ・ラジオ、映像、ショーなど台本ならなんでも）
ギャグ系を中心に雑誌ライター歴もそれなりに長い
得意技は「オタク search」

イラスト：Ｔ_T

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