10月18日にスタートした「君の花になる」（TBS系、火曜日22時）を見てびっくり！いきなりロケ地に品川区の銭湯が登場しました。しかも、ドラマの主舞台の一つともなりそうな設定で、第1話中に2回も出てきたではありませんか。

「君の花になる」は、佐神弾（高橋文哉さん演）がリーダーを務める7人組ボーイズグループと、彼らが共同生活をする寮の寮母・仲町あす花（本田翼さん演）のお話。デビューしたけど売れない「8LOOM（ブルーム）」は、事務所の社長（夏木マリさん演）から半年後の契約更新はないと宣告されます。寮母として転職してきたばかりのあす花も、当然、クビになってしまう。冷たい宣告に憤る彼女。実は彼女は元高校教師で、偶然にも弾はその時の教え子だったのでした。社長に抗議するとともに、7人に対してそれでいいのかと発破を掛ける。最初はバラバラだった彼らの心は徐々に一つになり、契約更新に向けて一発逆転しようと頑張ることになります。

そんな彼らが仕事やレッスンの帰りに立ち寄るのが、品川区西小山にある「東京浴場」。その経営者の娘でアルバイトをしている池岡奈緒（志田彩良さん演）は、8LOOMとは結成時から付き合いがあるツーカーの仲。だからこの銭湯は彼らのたまり場になっているのでした。

若き店長がリノベした話題の銭湯

東京浴場は同じ名前で営業している実在のお風呂屋さん。看板を替えずにそのまま劇中に登場するのは珍しい。それほど、ここは話題の銭湯なのです。2020年７月にリニューアルオープン。その一番の特徴は、番台を入ったらすぐに広がるブックカフェのような休憩ロビーで、７千冊もの漫画（絵本も少々）が並んでいます。お風呂上がりに漫画を読んだり、ドリンク（ビールもあり）したりして、くつろげる空間を提供しようと設置。男女共通で使え、道路（江戸見坂通り）に面した壁をガラス張りにして開放感を出しています。ドラマでも、メンバーたちがここでドリンクを手に話をし、ガラス張りの前に腰掛けていました。銭湯の外部でも内部でもロケが行われた、これも珍しいパターンです。

浴室にもびっくりする特徴があり、目を引くのはなんといってもこのブランデー樽。中に井戸水が入っていて、お湯との「温冷交代浴」が楽しめるのです。また、近ごろ人気上昇中の１人用「おこもりサウナ」も設置。予約すれば、コロナ禍でも安心して汗が流せるばかりか、携帯や音楽プレーヤーを接続すれば、内部のスピーカーで好きな音楽を聴くことだって出来ちゃいます。

気になる、銭湯つながりのあのドラマ

東京浴場は、経営者の都合で2019年に一度廃業した銭湯。そこを銭湯経営代行会社が引き継ぎ、20代前半の若き店長（当時）・相良政之さんが中心となって、ほとんどDIYでリノベーションしたというからこれまた驚き。わき出るアイデアが抑えきれず、大みそかにミニ除夜の鐘を設置して突いてもらうイベントや、本棚の１区画を月に4000円で貸して「フロナカ書店」を経営してもらうといった、ユニークな展開も次々と行われています。

リニューアル後、お客さんは3～4倍に。若い人、年配者、子供たちと、幅広い年齢層が集まり、お風呂に入っているより漫画を読んでいる時間の方が長い人もざらだとのこと。

以前はIT業界で働いていた相良さん。小さなころから大のお風呂好き、そしてIT業界で働きながらの銭湯通い。それが高じて、とうとうこの業界に転職したという経歴の持ち主。今年の4月に店長ポストを離れ、今は他の銭湯を含めたマネージメントの任に就いているそうで、きっと、あちこちの銭湯についても精通していることでしょう。

品川区の銭湯が舞台になっているドラマといえば、「ドクターX」。「君の花になる」を見て、そちらの新作にもグッと期待がふくらみます。神原名医紹介所は元銭湯「旗の台つりぼり店」の外観がロケ地になっていることを、「ドクターYとXが麻雀している銭湯（2020.11.25のコラム）」で、大門未知子行きつけの銭湯が「中延温泉　松の湯」であることは、「『ドクターX』銭湯と『土竜の唄』サウナの意外なつながり（2021.11.18のコラム）」で、それぞれご紹介しました。次はどんな展開になるのか、とても楽しみです。

ドラマがヒットし、銭湯が見直されて賑わっていけば、こんなにいい話はありません。品川区には、素敵な銭湯がたくさんあります。品川浴場組合のサイトを見れば、ずらり、この通り。

品川区の銭湯、バンザイ！

品川ウォーキングライター・キタロー
台本業 （テレビ・ラジオ、映像、ショーなど台本ならなんでも）
ギャグ系を中心に雑誌ライター歴もそれなりに
得意技は「オタク search」

イラスト：Ｔ_T

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