テレビ朝日の「水9刑事ドラマ」シリーズ、春の枠は「特捜9」。今年の第8話は、記念すべき一作となりました。小学6年生の少年誘拐事件が発生、その舞台となった所がスペシャルだったのです。特捜班の主任・浅輪直樹は、警察であることがバレないように変装して現地へ。橋を渡りながらその先に広がる風景を見て、彼が出した心の声は「そこは、僕が育ったまちだった」でした。そのまちとは、品川区八潮。橋は「かもめ橋」。それはつまり、主演の井ノ原快彦さんが育ったまちでもあり、劇中の浅輪直樹とそれを演じる井ノ原さんが、完全に一体化したお話になっていたのでした。

海に囲まれた特別なまちが舞台

八潮は海と運河に囲まれていますが、ドラマでは幹線道路が工事中で3本の橋を徒歩で渡らないと出入りできない設定になっていました。その橋の監視カメラ映像をチェックしても少年が通った形跡は見当たらず、八潮内で監禁されている可能性が高いと考える捜査陣。３本の橋のうち〝西浜風橋〟は「かもめ橋」（マップ②）、〝南浜風橋〟は「しおじ公園歩道橋」（マップ③）が、それぞれロケ地になっていました。

イノッチ自身の幼少体験が事件を解決？

こんな住宅街のどこに監禁？犯人は住民？
ここでは、学校も病院もショッピングセンターも同じ。顔見知りばかりで、誘拐なんて・・・と不思議がる少年の母親。その感覚がよく分かる、元住民の浅輪直樹。疑問を抱えつつ、少年の部屋で見つけたガラクタを見て記憶を呼び戻そうとします。第8話のタイトルは「あの日の少年」。浅輪は自分もそれを手にしたことがあり、彼の脳裏には自分のその姿が甦ります。そして、「あの日の少年」に戻りながら、１人でそのありかを探し始めるのでした。

そうこうしているうちに、犯人から要求された身代金引き渡し要求の時間が迫ってきました。500万円を用意し、指定された通り少年の母親が船に乗り込みます。その乗船場所が〝立会川桟橋〟（マップ④）で、ロケ地は勝島運河にある「大山丸桟橋」（「しながわ花海道」沿い）でした。

運河沿いには捜査陣が立って監視、浅輪が担当したのは「京浜運河緑道公園」のこのあたり（マップ⑤）でした。

結局、犯人は現れませんでした。誘拐というのが腑に落ちない浅輪。少年の両親の仲が悪く、コミュニケーションが取れていないことを知った彼は、あることを思い出し、より強く自身の少年時代を重ね合わせ、全力で走り始めます。〝西浜風橋〟（マップ②）を渡り、下に潜ると、やはりここに！廃墟となっているそこは、少年のガラクタのありかで、誘拐された少年もそこにいたのでした。実は、浅輪の両親も仲が悪く、よくこの秘密基地に籠もった体験を話します。少年も、自分が姿を消せば両親がちゃんと話をしてくれるだろうと期待し、誘拐事件を自作自演したことを告白したのでした。

さらに出てきた品川区の橋

八潮は、福山雅治さん主演「ラストマン」（TBS系、日曜日21時）の第５話（5/21）にも出てきたばかり（2023.6.12コラム「事件現場・大森ベルポートに、『ラストマン』福山雅治さんが出現！いきなりの八潮も、ロケ地に！！」で紹介）。その３日後に、今度は「特捜９」で井ノ原さんの自伝的ドラマ（ちょっと大げさかも？）が展開されるとは、びっくり！でも、実は第７話も品川区でロケされたのです。

５年半前、目黒川から遺体で発見された若い女性。爪に赤い塗料があり、目黒川に架かるある橋から飛び降りたと判断されていました。しかし、その橋に行ってみると、赤色が少し違う。班長の国木田誠二（中村梅雀さん演）、警部補の村瀬志保（羽田美智子さん演）、監察医の早瀬川真澄（原沙知絵さん演）の３人は、近辺を探して違う赤い橋を探します。その時、「五反田ふれあい水辺広場」、その横に架かる「山本橋」、さらには近くにある「ふれあいK字橋」が出てきました。おお、大人気の品川区！

今年の「特捜９」は、視聴率を２桁に乗せた第９話で終わり。好調をキープして「刑事７人」へと引き継がれ、その次には「相棒」も待っています。品川区でのロケ人気が、今後も、伝統ある「水９刑事ドラマ」人気のお役に立てれば最高です。

品川ウォーキングライター・キタロー
台本業 （テレビ・ラジオ、映像、ショーなど台本ならなんでも）
ギャグ系を中心に雑誌ライター歴もそれなりに
得意技は「オタク search」

イラスト：Ｔ_T

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