「教場」最終回で〝バズった〟立会川のアーケード商店街｜コラム

2023:06:30:14:48:00

「教場」最終回で〝バズった〟
立会川のアーケード商店街

2023.06.30

COLUMN

警察学校を舞台に、冷酷でミステリアスな教官・風間公親と若き警察官の交流を描いた、木村拓哉さん主演の人気シリーズ「教場」。皆から恐れ、崇められる風間教官はいかにして誕生したのか。2020年、21年と二度のスペシャルドラマを経て、ついに今年連続ドラマ化されました。

教場シリーズの前日譚となる「風間公親教場0」（フジテレビ系、2023年4月〜）には、新垣結衣さん、北村匠海さん、赤楚衛二さんなど人気俳優が次々に若手刑事役として登場。木村さんを軸に数話ごとにバディが入れ替わる大胆な構成。そして風間の過去がついに描かれるという展開に、放送前から期待の声が多く寄せられていました。

シリーズ最大の謎でもあった、風間の「義眼」。その原因を作ったある人物の重要なシーンに、品川区の商店街がロケ地として使われていたのです。

そのシーンが放送されたのは最終回中盤。商店街を巡回中の警察官2人が、ある男の姿に目を留めます。過去に風間に逮捕されたことを逆恨みし、6話ラストで風間の目を千枚通しで突き刺した十崎（森山未來さん）でした。声をかけても無視して歩き続ける十崎に焦った警察官たちは、思わずある行動をとってしまいます。それをたまたま周囲にいた人々が撮影して拡散したことで、やがて大きな問題へと発展していきます。

そのシーンのロケ地として使われた商店街が、京浜急行線・立会川駅近くの「立会川西商店街」でした。駅の西側から大井町方面に向かって続く約100メートルほどの短いアーケードで、中には商店や飲食店が立ち並んでいます。

事件は商店街の端から端で起きていた！

しなロケ取材班が立会川西商店街を訪れたのは、平日の朝10時。夕方から開く店も多いのでしょうか。まだ人の気配はありませんでした。

大井町側の入り口から中に入ると、さっそく、警察官が十崎とすれ違った「肉のいとう」を発見。警察官は立会川駅方面からパトロールに来ていたのでしょう。駅とは反対側からやってきた十崎に気づくと踵(きびす)を返して、立会川駅方面に戻ります。左手には「焼き海苔」の看板が目立つ「松本のり店」。こののぼりはドラマにもしっかり映り込んでいました。

警察官を無視して歩き続ける十崎。「錦すし」を超えたあたりで、ようやく十崎の前に警察官が回りこみ、わざとぶつかられたふりをして確保します。いつの間にか集まっていた通行人たちが、心配そうに、そして興味深そうにスマホを向けていたところで、このシーンは終わります。

実際に商店街を歩いてみると、驚くほどシンプルな順路で撮影されていたことが分かります。警察官は立会川駅方面からまっすぐ歩いてきて、十崎を発見して立会川駅方面に戻り、そちらに近いアーケードの出口で確保するのです。

ドラマの撮影では、同じ通りを歩いているように見せてもこのカットはA通り、このカットはB通りと、別の場所で撮ったものを編集して繋げていることも少なくありません。背後にあるビルを入れたくないなど、その事情はさまざまです。今回、立会川西商店街を歩いて感じたのは、どこを切り取っても絵になるということ。どこか懐かしさを感じさせる看板や、閉じたシャッターに描かれた愛らしいイラスト。そして短くてまっすぐなアーケードの突き当たりを横断する道が、背景に抜け感を作り出しているところ。「シンプルな1本道で起きた事件」を表すのにぴったりなロケーションで、おそらくリハーサルも本番もスムーズに終わったのではないかと想像します。

誰もがイメージする「商店街」の姿がここに

立会川西商店街は立地にも大変恵まれています。都心と横浜方面を結ぶ第一京浜（国道15 号）に面していて、アクセスはばつぐん。それにもかかわらず、アーケードと建物が騒音をシャットアウトするのか、想像していたよりもグッと静かだったのが印象的でした。

じっと佇んでいると、子どもの頃に見た昔のドラマのシーンを思い出してきます。ホームドラマの主人公が暮らす商店街も、チェーン店が立ち並ぶ今どきの明るい通りではなく、個人商店が立ち並んだこんなアーケードだったのでは？教場のような緊迫感のあるミステリーはもちろん、昭和の時代を再現したドラマなど、さまざまなシーンに使えそうだと妄想が膨らみます。