大ちゃんと「情報屋」の猛ダッシュは全て品川区で撮影
15年前と現在に起きた2つの事件と恋愛が絡むラブサスペンスとして、初回からかなり反響が大きかったドラマ『最愛』(TBS系列、2021年10月〜)。複雑な過去を抱えたヒロイン・梨央(吉高由里子さん)と刑事になった初恋の相手・大輝(松下洸平さん)との切ないシーン。そして梨央をそばで支えてきた弁護士・加瀬(井浦新さん)の温かいまなざし。さまざまな「最愛」の形が描かれたこのドラマを、放送ごとに息をのんで見守っている人も多いでしょう。
梨央の最愛の相手として忘れてはならないのが、弟の優。外傷から記憶障害を抱えてしまった優のために新薬を開発すると誓った梨央ですが、成長した優は自分の「ある過去」を思い出したことで、梨央の前から姿を消してしまいます。優から届く絵ハガキを部屋に飾り、弟を想う梨央。11月5日に放送された第4話にて、ついにその優の消息が明らかになりました。
すでにほとんどの視聴者が考察していた通り、優は「あの人」と同一人物でした。そして、それに大輝が気づく重要なシーンが、品川区で撮影されていたのです!
ある殺人事件に絡む謎の男「情報屋」を追い、聞き込みに訪れた大輝。ウィークリーマンション内で管理人に話を聞いているところに情報屋が帰宅。大輝と目が合うと、身をひるがえして逃げます。
マンションは五反田駅近くの目黒川沿いにあります。情報屋の逃走はここからスタートするわけですが……。
ドラマでよくあるのが「マンションは品川区、途中の路上はA区、追い詰めるシーンはB区」というように、異なるロケ地で撮った映像をつなげるという手法。でも、最愛のこの逃走シーンは全て品川区で撮影されているのです。実際にどんなルートで逃走したのか、その足取りを追ってみました。
五反田駅近くから恵比寿駅方面まで。一体何キロ走ってる?
追い詰められる情報屋と追う大輝。五反田の路上から目黒方面に向かって走り出した情報屋は、次の目撃スポットから推測する限り、どうやらすぐに右手に折れ、首都高2号線に並走して白金方面に向かったようです。
歩いてみると分かるのですが、この道はゆるい上り坂が延々と続きます。箱根駅伝の5区、とまでは行きませんが、走ると結構息切れするのでは……? 駅伝のエースとして活躍した大輝をもってしても追いつかない、情報屋の足の速さと体力に感心します。
次に目撃されたのが、品川区上大崎2丁目の民家の路地。さらに首都高の高架下を駆け抜けます。応援を呼びながら追いかける大輝。ここまで最短距離でおよそ1.7kmです。ちなみにこの高架下はしなロケのロケ地情報でも公開している場所です。首都高の下で撮影できる貴重なスポットでありながら、一歩裏手に入れば民家の路地があるなど、いかにも東京らしい雰囲気があるエリアです。
ロケ地情報:首都高目黒線高架下1
ロケ地情報:首都高目黒線高架下2
先ほどの高架下を左手に折れて住宅街を少し進むと、すぐに目黒駅と恵比寿駅を結ぶ線路の脇道にぶつかります。情報屋と大輝はこの道も爆走。山手線の内回りとすれ違います。
先程の目撃地点からは300m弱といったところでしょうか。上大崎2丁目という同じ町内にはいますが、西五反田のマンションからは実に2km近い逃走。さすがにそろそろ疲れてくる頃かもしれません。
電車好きには実は有名な「長者丸踏切」
そして息を切らしてたどり着いた先に、踏切が! 情報屋が渡り切ったところで閉まる遮断機! 視聴者が「あー、もうダメだ、電車が通過している間に逃げられる」と思ったものの、そこはドラマのお約束。逃げればいいのにいきなり立ち止まって情報屋と刑事が踏切を挟んで対面します。ここで情報屋が発したある一言が、大輝をはっとさせるのですが……
話をロケ地に戻します。この踏切は先ほどの線路沿いのカットからすぐの品川区上大崎2丁目にある「長者丸(ちょうじゃまる)踏切」。かつて品川区にあった長者丸という地名がそのまま使われています。線路を渡ると、目黒区三田という住所になる、区ざかいにある踏切です。
これまで二人が走ってきた延長線上にあり、逃走ルートとしてはリアル。でも、お気づきでしょうか? そう、さっきまで左側にあった線路が右側に。いつの間にか走っているうちに二人は目黒区側にいたのです。本来であれば、線路沿いをそのまま走って左手に踏切があるのですが、いつの間に渡った……?それでも目黒区に残された大輝と品川区に戻った情報屋の対峙シーンはとてもドラマティックで「区が逆になってる」みたいなツッコミは野暮かもしれません。
あえて目黒区側から二人が走ってきて、品川区側に情報屋を立たせた理由として考えられるのが、その背景。踏切の横にある高架の下には描かれた、太陽のイラスト。さらに情報屋の背後にはどこに続くとは分からない道が広がっています。一方、大輝の背後はツタが絡まるコンクリートの壁が迫っているという状況。撮影時の「抜け」を意識したとも考えられますが、最愛ファンとしては「迫り来る大輝の追及。それに対し、自分を見守る太陽のような姉と訣別し、果てのない一本道の逃亡を続けなければならない情報屋の心理状況を表しているのでは?」とつい深読みしてしまいました。
ところでこの踏切、実は鉄道ファンにとってはとても有名な場所。下を埼京線(ドラマでも列車が通過していましたね)、上を山手線が走っており、踏切の上で立体交差しています。過去には『タモリ倶楽部』で、この踏切の音のない映像を見ながら電車の音真似をアフレコする企画も放送されたとか。ドラマや映画のロケのみならず、検索すれば鉄道ファンが撮影したたくさんの写真が出てきます。
人と自転車が通れるだけの小さい踏切ですが、線路部分が高台に挟まれた谷状になっているため、自転車が勢いで突っ込んでこないように、くの字型の黄色い柵が設置されているのも、なんともいえない味があります。
11月12日に放送される第5話にも、きっとこの重要なシーンは回想として登場するはず。その前に、見逃し配信で逃走劇を見直して見てはいかがでしょうか?
ライターK
女性誌やウェブで飲食店、話題のスポットを取材するライター。 会社員時代の職場が品川区にあり、品川に対する土地勘と思い入れがある。
イラスト:T_T
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