親切だけどお節介、でも心優しく憎めない。「祈りのカルテ」（日本テレビ系列）に主演している玉森裕太（Kis-My-Ft2）さんのキャラは、毎回、多くの人々の心を引きつけてやみません。「NICE FLIGHT!」（テレビ朝日系列、7-9月）でも、その魅力が満開でした。

玉森さん演じる倉田粋（すい）は、子供の頃から航空業界に憧れ、自社養成パイロット試験に2度目のチャレンジで合格し、コーパイ（副操縦士）として活躍中。何ごとにも真面目で真っ直ぐですが、小器用なタイプではありません。

渋谷真夢（中村アンさん演）は、沈着冷静で緊急事態にも迅速に対応する管制官。パイロットの気持ちもよく理解できるものの、感情表現が苦手で無駄な会話は全くなし。東京に生まれて青森の祖父に育てられ、青森で管制官になって羽田空港に異動。恋もご無沙汰気味でした。

「ピカンチ」のロケでも有名な橋で

コーパイ3年目の粋。ある日、羽田空港の天候悪化で緊張の着陸に。しかし、冷静で的確な真夢の管制に救われます。最近、聞くようになったその声。お礼を言おうとしたものの、冷たく無線を切られてしまう。そこから粋の〝ひと聞き惚れ〟が始まるのでした。

このドラマが心地いいのは、ちょっと三角関係になりかけたりするものの、陰謀や策謀めいたものがなく、嘘や誤解も軽くて、すぐ解ける。そして、それぞれが自分の好きな人や好きなものに、正直に向かっていく点です。それが象徴的に表されていたのが、6話、品川区でロケされた二つのシーンでした。

粋と仲良し、整備士の酒木ジェームス（尾上右近さん演）は、幼い息子を育てるシングルファーザーで、常に定時退社して息子との時間を大切にしています。その息子6歳の誕生日会が、いつも仲間たちの集うお洒落な餃子店で開催されました。しかし、粋だけは訓練中で参加できません。パーティが終わった帰り道、酒木は息子をおんぶしながら橋を渡って帰宅します。一緒に歩くのは粋と同じエアーのチーフパーサー飯塚理香子（黒川智花さん演）。入社当時にパイロット狙いだった彼女は、今や整備士に方向転換。息子をこよなく愛する酒木に、グッと引かれているのでした。

いつもと違う、いつもの公園

パーティでかなり酔っ払っていた真夢は、同僚の夏目幸大（阿部亮平さん演）が送ることに。2人は公園で一休みしながら話します。幸大は航空管制官として真夢を尊敬し、憧れていますが、女性としての真夢にもほのかな思いが。でも、粋との恋路を邪魔するわけにはいきません。そこで、思い切った行動に出たのです。

この6話のもう一つの品川区ロケ地が、東品川海上公園でした（マップ②）。ここは数々のドラマ撮りが行われているロケ名所。しなロケのコラムでも、「危険なビーナス」、「グランメゾン東京」「わたし、定時で帰ります」「東京独身男子」などを紹介しています。ただ、それらの多くはアイル橋のかかる水辺のエリア（マップ③）での撮影。今回は珍しく〝内陸部〟、昭和橋交差点から入ってすぐのところにある「健康広場」と呼ばれる一角でのロケでした。

ここで2人は、こんな会話をします。
幸大「倉田さん、本当にいい人ですよね。パイロットなのに鼻にかけていないし、誰にでも親切で、真っ直ぐで。perfect!って感じ」
真夢「そうかな。お節介だし、思ったことすぐ顔に出るし、すぐ人信じるし。つくづく私とは逆だなあって。愛想がなくて、伝えるのが下手くそで、人との距離感も分からない。付き合ってもいつもうまくいかないんだよね」
幸大「いいじゃないですか。変に取り繕ったりしない真夢さん、素敵です」

「素敵です」の言葉に、少し驚き、見つめ、視線をそらせる真夢。彼女を見ながらも、やはり視線を外す幸大。彼女に憧れながら、粋との恋路を邪魔しない範囲での、彼なりの最大限の告白のように見えました。この時の2人の表情は素晴らしく、やっと昭和橋交差点から駆けつけてくる粋にバトンタッチするまでの時間は、このドラマの最大の見せ場の一つとなりました。

今月スタートした「祈りのカルテ」にも、品川ロケがありますように！

★「NICE FLIGHT!」はTELASAにて全8話が配信中。また、スピンオフドラマ「NICE CONTROL!」も全3話が配信中です

品川ウォーキングライター・キタロー
台本業 （テレビ・ラジオ、映像、ショーなど台本ならなんでも）
ギャグ系を中心に雑誌ライター歴もそれなりに
得意技は「オタク search」

イラスト：Ｔ_T

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