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2020:04:06:09:30:00

ゼームス坂、横道を行く。 ~幽霊、くらやみ、仙台。謎の坂たち~

2020.04.06

COLUMN

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小説「ゼームス坂物語」(高尾五郎著、清流出版、2004年)の舞台となったゼームス坂。前回のコラム(2020.3.30)では、坂を下から上へと歩きつつ、その歴史や街並などについてご紹介しました。今回は横道にそれながら周辺を散策。そこには不思議な名前の坂道や、ミステリー小説の舞台となった坂道、さらには東北地方との意外なつながりのある坂道が待っていました。テレビドラマの常連ロケ地も発見!

第一京浜「南品川四丁目」交差点からゼームス坂に入るとすぐに左へとカーブしますが、そこをまっすぐに行きます。すると、こんなレンガ塀が100メートル近くも続くではありませんか。ここは天龍寺というお寺の壁だそうですが、ドラマに出てきそうな道。レンガの隙間には草花がたくましく生えているところもあって、楽しく寄り道ができるのです。

200406_3.jpg坂に戻り、中腹へ。ゼームス坂物語に出てくる「ゼームス塾」は、この中腹から階段を下りていったところにあるとの設定ですが、階段はないものの下りていく坂道ならいくつかありました。その一つ、品川特別支援学校前のT字路を左折してみます。途中、クランク状になり、さらに下ると突き当たる坂道。 なんと、その名は「幽霊坂」。かつて道の両側に大きな樹木が茂り、夜は非常に淋しい場所だったためにこう呼ばれているとか。
ここを舞台にした小説があります。「ゼームス坂から幽霊坂」(吉村達也著、双葉社、2001年)は、妻に自死された夫が世間体を考えて庭に遺体を埋めたものの、 その妻がなぜかいつも通りに生活しているというミステリー。恐怖とユーモアの中で夫婦愛を再確認していく、感動の物語です。さあ、みなさんは、読んでから歩きますか?歩いてから読みますか?

ゼームス坂を上り切った突き当たりは、「ゼームス坂上」交差点(前回コラムの写真参照)。まさに、そのままの名の交差点を大井町駅と逆方向に歩いていきます。すると、こんな交差点に。まっすぐ行っても、左へ曲がっても坂道です。直進は「旧仙台坂(くらやみ坂)」、左折は「仙台坂」とのこと。ややこしい坂道名の秘密を探りに、まずは直進します。

すると、右側にとても趣のある建物が。しかも、中には巨大な樽があります。どうやらこれは、味噌蔵のようです。江戸時代、この地に仙台藩伊達家の下屋敷があり、仙台味噌の醸造施設が建てられました。ここで造られた風味豊かな仙台味噌は、江戸詰仙台藩士のまかないだけでなく、江戸っ子たちにも販売され、評判に。そして、明治時代に八木家に委任され、「八木合名会社仙台味噌醸造所」となって現在に至っているそうです。

詳しくは、品川区のサイト

しながわ観光協会ホームページ で。

味噌蔵を通過すると、今度は右側に大木が現れてきます。これは「仙台坂のタブノキ」で、樹齢約300年。仙台藩下屋敷の裏玄関に植えられていたといわれ、品川区指定天然記念物になっています。そして、この木を過ぎると仙台坂。視界が開け、第一京浜や京急の高架が見渡せます。当コラムページのトップ写真がそれ。素敵なマンションに囲まれつつ、広い歩道をのんびり散歩したり、ちょっと座って眺めを楽しんだり。ずっといたくなる坂道です。

さて、少し戻って、今度は「仙台坂(池上通り)」へ。そこは車も楽々通れる広い道。この坂も第一京浜へと下っていきますが、途中、左手(北側)にあるのが品川エトワール女子高等学校です。どこか見覚えがあるなあと思えるこの白い建物は、テレビドラマでよくロケに使われる校舎。最近では、「俺の話は長い」(日本テレビ系列、2019.10-12)の撮影に使われていました。そんなわけで、仙台藩にちなんで元々は味噌蔵のある道が「仙台坂」と呼ばれていたのですが、こちらの坂の方が広く、交通量も多くなったため、「仙台坂」と呼ばれるようになって、味噌蔵の方は「旧仙台坂」または「くらやみ坂」と呼ばれるようになったとのことでした。

ゼームス坂は、横道も素敵。あちこちに物語や歴史が散らばっている坂道でした。

(品川ウォーキングライター・キタロー)