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時代の変わり目の大舞台となった鈴ヶ森

2019.05.01

COLUMN

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2019年4月、歌舞伎座では平成最後の大歌舞伎が行われました。とくに「掉尾(とうび)を飾る大顔合わせ」として、2人の人間国宝、尾上菊五郎と中村吉右衛門が演じた「御存(ごぞんじ)鈴ヶ森」は、文字通りの大顔合わせ、超目玉上演となりました。

このお話は、品川区にあった鈴ヶ森の刑場が舞台。江戸の代表的な侠客である幡随院長兵衛が、お尋ね者の侍である白井権八の見事な立ち回りを見て「お若けえの お待ちなせえやし」と呼び止め、そこから「雉(きじ)も啼かずば打たれまいに」や「阿波座鴉(からす)は難波潟」、「幡随院の長兵衛というけちな野郎でごぜえやす」など、有名な台詞のやりとりが繰り広げられる鶴屋南北の名作です。大きな時代の変わり目の記念すべき舞台になったとは、品川を愛する人間として本当に光栄です。

鈴ヶ森の刑場は、小塚原(荒川区)とならぶ江戸の処刑場で、慶安4(1651)年に出来ました。最初に処刑されたのは、この年に起こった由井正雪の乱に加わった丸橋忠弥(まるばしちゅうや)だと言われ、他に、平井権八(歌舞伎では白井権八)、天一坊、八百屋お七など、歌舞伎や講談でおなじみの人物も多くいます。

文久2(1862)年に開かれた日蓮宗大経寺の境内に鈴ヶ森刑場跡が残され、処刑に使用したと言われる台石、首洗いの井戸、多くの供養塔などが現存しています。なかでもシンボル的な存在が元禄11(1698)年に建てられた「題目供養塔」です。「南無妙法蓮華経」と筆太のひげ文字が刻まれた高さ3メートルあまりの石塔は、歌舞伎の「鈴ヶ森」でも有名。今回の舞台でも、高さ1メートルほどの笹が生い茂る中、中央にこの塔がそびえ、その左右には計3本の松の木があしらわれていました。

鈴ヶ森の刑場は、他にも多くの作品に出てきます。
最寄駅は京急・大森海岸駅です。

また、刑場跡の近くには、人気スポットの「しながわ水族館」があります。

さらに、幅広い世代が楽しめるレジャースポット「大井競馬場」も。10月~3月までは、関東最大級のイルミネーションが実施されています。
ぜひ、散策してみてください。

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