ここ数年来の縄文ブームも、いよいよ本格的な盛り上がりを迎えています。ドキュメンタリー映画「縄文にハマる人々(山岡信貴監督作品)」が7月に東京で公開されて話題をさらう中、8月25日からは大阪と名古屋でも公開、全国へと拡大ロードショーがスタートしました。
この映画は、縄文に興味がなく、どちらかというと距離を置いていた山岡監督が、友人からの依頼で一人の弁護士を取材することになり、その時に延々と縄文の話を聞かされたのがきっかけで自身が縄文にはまりだし、5年の歳月を費やして完成させた作品です。
取材は100箇所にも及び、5件の国宝土偶を含む多くの土器や土偶が映し出される中、「縄文の原点」との位置づけで品川区大井にある「大森貝塚遺跡庭園」が紹介されています。
大森貝塚遺跡庭園。
ここは、アメリカ人学者のエドワード・S・モース博士が貝の研究で来日中の1877年に大森貝塚を発見し、発掘調査を行った場所です。この発掘は、日本で初めて行われた学術的発掘でもあったとされています。博士は英文で書いた報告書において、見つかった縄目模様の土器を「cord marked pottery」と名付けましたが、それを後に白井光太郎という学者が「縄紋」と訳したことからこれが定着しました。現在では、一般には「縄文」の表記が主流になっていることは言うまでもありません。映画では、そのことも紹介されています。
すなわち、私たちが当たり前に学び、使っている「縄文」という名称発祥の地は、なんと品川区の大森貝塚遺跡庭園だったのです。縄文マニアにとってはまさに“聖地”としかいいようがありません。
「縄文にハマる人々」は、8/31以降も、小倉、山梨、神戸、秋田、金沢、京都、新潟、大分・・・など次々と公開予定です(詳しくは下記・公式サイトを)。公開地域の皆さん、どうぞお楽しみに。
ところで、山岡監督の出身地である大阪の初日(8/25)、上映会場のシネ・ヌーヴォーには炎天下の朝から長蛇の列が出来、入場しきれるか心配されるほどの超満員の盛況ぶりを見ました。弥生人が有力な西日本での反応を心配していた監督も、その様子に驚き、上映後のトークショーでは感謝の言葉とともに軽快なおしゃべりで撮影秘話などを披露してくれました。
相次ぐ出版物、縄文グッズの充実、イベントの盛況など、なぜ今、これほど縄文が人気なのか、映画の中でもいろいろな意見が出てきます。1万年以上も続いた平和な時代、限られた土地を取り合う弥生が嫌い、もちろん、土偶や土器のデザイン性などもあるのでしょうけど、映画を観るとともに、 “縄文の聖地”である大森貝塚遺跡庭園に出掛けて何かを感じてみてはいかがでしょう。本物の貝塚が見学できるブースなど、大森貝塚や縄文時代について知ることができるコーナーがあるほか、公園としても素敵に整備されていて、30分に1度、ミスト噴水が出る縄文の広場もあり、静かにのんびりと過ごせる空間です。なお、近くの品川歴史館でも、縄文や大森貝塚に関する資料が展示されています。